王国
中村 文則
河出書房新社
2011-10-14



Tairaオススメ度:★★★☆☆

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組織によって選ばれた、利用価値のある社会的要人の弱みを人工的に作ること、それが鹿島ユリカの「仕事」だった。
ある日、彼女は駅の人ごみの中で見知らぬ男から突然、忠告を受ける。
「あの男に関わらない方がいい…何というか、化物なんだ」
男の名は、木崎―某施設の施設長を名乗る男。
不意に鳴り響く部屋の電話、受話器の中から静かに語りかける男の声。
「世界はこれから面白くなる。…あなたを派遣した組織の人間に、そう伝えておくがいい…そのホテルから、無事に出られればの話だが」
圧倒的に美しく輝く強力な「黒」がユリカを照らした時、彼女の逃亡劇は始まった。
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以前読んだ「掏摸」がとても面白かったので、その続編に当たるこの小説を読んでみたけれど、僕の感想はいまひとつというところ。

掏摸では徹底的かつ理不尽な悪の存在として描かれていた木崎が、言い訳がましくなったというか、ややぼんやりとした印象になったように感じる。

掏摸では、一般社会からは想像もできない悪は日常に隣り合っていて、いつでもそこはぽっかりと口を開けて待っているという強烈な悪の恐怖を感じたけれど、王国では最初から裏の社会が描かれているため、その恐怖のリアリティが薄くなったように感じた。

だけど、中村文則の淡々とした文章は個人的にすごく好みなので、他の作品も読んでみたいと思う。